私から見たVRChatの10の楽しみ方

はじめに

VRChatでは日本人のアクティブユーザーが最大1万人程度いると言われていますが、「VRChatでの過ごし方」に関する資料はあまりアクセスしやすい形で転がってはいません1

この記事では2019年1月現在で私が知っている過ごし方を簡単に書いてみます。 どちらかというと「VRChatをはじめたい・はじめたばかりだけど何をすればいいかわからない」という人向けです。 もちろん、ここに書いていないプレイスタイルももちろんあるでしょうし、これらのうちどれかを私が推薦するものではありません。

1. 居心地のいいクラスタを見つける

フレンド交流の究極形態、誕生日イベント

最も主流にして最難関の遊び方です。 VRChatでのクラスタについてはこちらの記事で解析していますが、おそらく多くの人は気の合う人たちを見つけるとその中で特定のワールドに集まったりゲームワールドを遊んだりしていると思われます。
居心地のいいグループを見つけるには「とにかく色んな人のいるワールドにJoinして人に会う」しか方法がないのですが、プレイし始めてすぐにVRChatじゅうの人に会うことはできません。 Kanataさんの記事で描写されているように、Publicなインスタンスでは非日本語圏の人やトロールが多く存在する(と考えられている)から、日本人ユーザーの多くはPrivateなインスタンス内で遊ぶことが一般的です。 ところが、Privateインスタンスは「入室にいちいち承認作業が必要なInvite・Invite+」と「フレンドのみ(またはフレンドのフレンドのみ)が入室できるFriend・Friends+」の設定しかないため、必然的にFriendかFriends+でインスタンスを作成することになります。 これにより、「日本人のいるPrivateインスタンスに行くにはフレンドを作るしかない」「フレンドを作るにはPrivateインスタンスにいくしかない」という悪循環が生まれてしまいます。 この問題を解決するためには以下のような試みが有志によって行われています。

  • 初心者集会:と呼ばれるイベントが開催されることがあります。初心者同士や紛れ込んでいるベテラン勢フレンドになることでVRChatに入る敷居を下げる効果があります。
  • #VRChatはじめました:というTwitterのタグがあります。これにVRChatのIDをつけることで、Twitter経由でフレンドを募ることができます2。このタグをつけたツイートを率先的にRTされるVTuberさんもいます。
  • VTuberによるフレンド承認:ごく一部のVRChatユーザーのうち、特にVTuberとして活動されている方はフレンド申請を積極的に受け入れる姿勢を表明しています(例えばフィオさんのらきゃっとさん)。ただし、会ったことのない人にいきなりフレンド申請をするのはよくないマナーとされているので、事前によく確認しましょう(必要であればTwitter等で聞きましょう)。

2. 居心地のいいワールド(雰囲気)を見つける

治安が悪いワールドの例

VRChatを楽しむために特定のフレンドに依る必要は必ずしもありません。というのも、特定の「特別視されているワールド」にはそれぞれ違った魅力的な雰囲気があるためです。 こういったワールドは有志によって定期的に運営されているもので、規模や入場方法もさまざまです。多くの場合、主催者に申請すれば行くことはできます。 こちらの例はこの記事の前半部分で解説しています。

3. Public(野良)に繰り出す

Public(Publicインスタンス)とは「VRChatのWorldメニューから直接アクセスできる場所」のことで、日本人以外の全世界のVRChatユーザーが必ずアクセスできる場所です。 Publicではトロール(荒らし)や著作権・倫理的にまずいアバターが一定数おり、多くの場合で日本語が通じないため前述のように日本人ユーザーは非Publicな場所にいることが多いのですが、逆に「全く知らない国の全く知らないユーザー」に常に出会うことができる場所でもあります。視界ハックと呼ばれる技術で突然グロ画像を眼の前に押し付けられるリスク3もあれば偶発的に爆笑するような出来事が発生することもあるもあるので、VRChatの最もスリリングな側面と言えます。

Publicのなかでも”Fantasy Syukai jou”(ファンタジー集会場)や”1619 Hz”というワールドは日本人が多くは集まる傾向にあるため、「Publicに行ってみたいけど日本語でコミュニケーションしたい」人はこのようなワールドで検索してみるといいかもしれません。

4. “Chat”をしない

ある日のSilent Club

VRChatを楽しむためにChat(会話)をする必要は必ずしもありません。 というのも、VRChatユーザーには「無言勢」といわれる「一切ボイスチャットを使用しない人」がおり4、そのような人たちでもきちんとコミュニケーションは成立します5。 無言勢は「込み入った話がオンラインでできない」という縛りがありますが、逆に気負うことなく気軽にコミュニケーションが(双方ともに)楽しめるという利点があり、多くの場合色んな人に親しまれています。 こういったプレイスタイルは好きな人はSilent Clubという「強制的に全員無言になるクラブ」があるのでぜひ行ってみてください(勝手に宣伝)。

また、会話だけでなく体の動きでなんらかのコミュニケーションや表現を行うこともできます。例えば、フルボディトラッキングを使ったダンスやかわいい動き(いわゆる”kawaii move”)をしたり、アバターに仕込んだギミックでパフォーマンスを行うことが可能です。もちろん、これらを所構わずやると迷惑だと感じる人もいるため、比較的実験的な要素が許容される雰囲気のあるFantasy Syukai jou6やダンスワールドに行くのがおすすめです。

5. ロールプレイ

謎の組織、「環境課」(私もよく知らない)

VRChatを楽しむために自身の人格を露出する必要は必ずしもありません。 というのも、姿や声を自由に変えられるというVRソーシャルの性質上、特定のキャラクターを演じる「ロールプレイ」が可能になるためです7。 私はあまり詳しくはないのですが、悪役結社ヴァリアールとか「環境課」などの例があります。 また、バーチャルユーチューバーのなかにはYouTubeチャンネルでの活動とVRChatでの活動をリンクさせている人も多くいます(フィオさんおきゅたんbotさんなど)。動画とVRChatへの力の入れ方の比率はさまざまですが、このように「会えるVTuber」という活動スタイルを取っている人もいます。

6. 有名人に会う

あまり推奨されないプレイスタイルです。 現実世界と違い、VRChatでは有名な人(例えばねこますさん)に会おうと思ったら(技術的には)会えます。 バーチャルだからこそ「追っかけ」が極限までできてしまうのですが、同時に「追っかけ」の問題点はバーチャル世界でも適用されるため、相手が不快に思うようなことをするのはやめましょう。

7. 技術開発・作品制作

VRChatを楽しむためにVRChatをプレイする必要はありません。 というのも、VRChatは「ユーザーがワールドやアバターをほぼなんでもアップロードできる」という極端な自由度の高さがあるため、アバターや3Dモデル、シェーダー、ワールドを制作することも「VRChatを楽しむ」ことの一部となるためです8。 新しいアバターを作って人に見せたいと思ったらそれを「着て」適当なワールドに行ってみればいいだけなので、作品を創作するハードルは(他の発表形態と比べて)極めて低いです。新しいワールドを作ったらフレンドを誘って招いてみたりPublic申請して全世界のユーザーに見てもらうこともできます。 もちろんTwitterでの告知も有効な手です。

個人的には、この「クリエイターが作品を自分の体にできる」「クリエイターが作品にネット経由で人を『招く』ことができる(場合によっては数千人規模)」というのはクリエイター気質の人にとって非常に暴力的な魅力であると思っています。例えば「1%の仮想」を現実世界で開催するにはとんでもない量の(物理的・金銭的な)努力が必要でしょうし、開催したとしてもせいぜい身内数十人くらいしか来ないと思います。 また、「VR睡眠」や動画視聴でよく使われるワールドである“Another Home”坪倉家は数百人〜数千人規模の「家」になっていると思われますが、これを現実世界でやることはほぼ不可能でしょう(1件家を設計してもそこに寝る人数はスケールしないので)。 VRChatではアップロードできるデータの制限が非常にゆるいために「なにか新しい作品を世に出したい」というクリエイターっぽい人にとってはとても魅力的な選択肢であると思います9 10

8. イベントに参加する

わたしがやったやつ

VRChatでは日々さまざまなイベントが行われています。内容や参加方法はさまざまですが、どれもVRソーシャルでの新しい表現・交流方法を追求したものになっています。Sunaさんの記事でイベント情報の入手方法が詳しく書かれています。

9. VRソーシャルの深淵を覗く

VRソーシャルでは「仮想の体がネット経由で人と共有される」という性質上、人間の社会活動の極限に迫ったアクティビティが(一部で)試みられています。HMDをつけたまま寝る「VR睡眠」もその一例ですが、その他にも「VR恋愛(結婚)」や「ベッドしか置いてない2人用のJustなワールド」などといったワードも囁かれています。この記事ではいろいろとセンシティブな話題なので詳しくは言及しません。

10. 環境が整うまで待つ

現状VRChatをVR環境で楽しむためには、数十万円の投資をしてハイスペックPCとVR機器を購入し、かつ不便なUIやシステムに耐えながらひたすらフレンドを増やしていく必要があります。また、現在VRChatに居着いている人の多くは(現実ですでにプレイしている人がいないために)単身で飛び込んだ人もそれなりにいると思います。 将来的にはクリーンかつ快適なVRソーシャルサービスやワイヤレス6DoF VRヘッドセットが普及していくと期待されるため、VRChatをまだ始めていない人は「快適に仮想世界を楽しめるようになるまで待つ」こともVRChatを楽しむ方法の一つではないかと思います。もちろん、VR界隈は体感的な時間の流れがとても速いと言われているので、なにかしらの活動(創作活動やVTuberなど)をしたときにそれが評価されるハードルは日々上がっていっています。VRソーシャル界隈でクリエイティングなことをしたいと考えている人はその点を考慮して上手な参入時期を決めるのも重要だと思います11

参考資料

自分にあったプレイスタイルを見つける上で参考になりそうな資料一覧です。

VRChat それは満天の星空のように:Kanataさんの書かれた、VRChatの最初期から最近に至るまでの出来事が書かれた記事です。Kanataさんがどのような思いでVRChatの中で”生きてきた”のかが克明に語られており、必見です。

まっとさんはVRChatのプレイの様子をほぼ毎日Twitterにまとめられています12。一般的に動画は画像よりもはるかに情報量が多い(さらにTwitterでは1ツイートあたり4画像という制限がある)ため、当時のトレンドや人々の振る舞い方を知るよい手がかりになります。

V-TV:VRoadCaster(V-TV)はVR全般のニュースを紹介する生放送番組です。番組のなかで、放送当時の流行やVRChat内でのインタビューをいくつか扱っています。

  1. このような記録の最も一般的な形態は「Twitterで1ツイートに4枚の写真を添付する」というものですが、これを見つけるにはまずVRChatプレイヤーを多数フォローする必要があります
  2. 私は使っていないのでどのくらいフレンド申請がくるのかは分かりませんが……
  3. 現在はSafety Systemと呼ばれる仕組みを適切に設定すればこのような心配はあまりありません
  4. 理由としては「住宅事情的に声を出せない」「肉声がアバターやキャラクターと合わない」「そういう性格」などがあると思われます
  5. 補助的に「指で文字が書ける機能」をアバターに仕込むことも一般的です
  6. ワールド自体のファンタジー調の雰囲気とは真逆ですが、歴史的経緯によりそういう事になっています
  7. 特に前述の無言勢やVTuberの場合、その人の人格とキャラクターの境界はあいまいになります
  8. 基本的にVR中では(OVRDropのようなツールを使っても)制作作業がし辛いため、「VRChatを極めるほどVRChatのプレイ時間が減る」というジレンマが存在します
  9. 同時に、一般的なVRChatのイメージが「著作権無視が当たり前の混沌したアレ」に見られがちなのも注意すべき点です
  10. 私の場合はこの要素が必ず重要になると踏んでフレンド数人の状態で縁日ワールドのPublic化を敢行したりしてました
  11. 個人的には今すぐVR HMDを買って飛び込んでほしいですが……
  12. 撮影のためにしゃがみ横スライド移動する姿がとてもかわいい