PSF進捗まとめ #1

今月のはじめ(本当はもう少し前)から新しいVRChatワールド「PROJECT: SUMMER FLARE(プロジェクト:サマーフレア)」の制作を開始しました。

企画当初は、制作の様子は基本的に#PROJECT_SFタグ付きのツイートで書いていこうかと思っていたのですが、Twitterだけだと書ききれないこととかもいろいろあるので、ときどきこうやってブログ形式でも制作中の内容を書いてみることにしてみます。ただ、ブログ用に写真を撮ったり文章を起こしたりするのはけっこう大変(その時間があれば作品本体の作業にもっと時間を割ける)なので、自分のツイートを引用してそれを詳しく解説するというどこかで見たようなスタイルで記事を書いていこうと思います。

アスタリスクの足枷

ヨツミです1 2 3

VR謎解きワールド「アスタリスクの花言葉」が完成したあと、私は次に何を作るかをずっと考えていました。というのも、アスタリスクは良くも悪くも全力で”攻めた”作品だったからです。

アスタリスクの感想をSNSから全力でチェリーピックすると次のようになります。

クリアしていない人から見ると「たかが謎解きゲームのはずなのになんでこんなクソデカ感情が???」という感じだと思いますし、作者の立場から言えば「なんであんな作品作っちゃったんでしょう……」という感じなのですが、素人クリエイター4 としてはここまでいろいろと言われてしまうと「各要素のクオリティアップの余地はいくらでもあれど、内容としてはもうこれを超える作品5 は作れないのでは ?もうあとは隠居しかないのでは?」という心持になってしまっていました。

ただ、私にとって趣味の創作活動は一種のストレス発散ですし、まだなにか面白いものを作りたかったので、「アスタリスクの花言葉」とも「1%の仮想」とも違ったネタを考えていました。

そこでルピさんとファスさんから「最高の夏、いっしょに作らない?」と連絡が来たところから「PSF」の話がはじまります。

告知の方針

初っ端から全力投球な感じの制作開始告知です。

VRChat日本人コミュニティは(いまだ正式な統計はありませんが)アクティブユーザが数千〜数万人程度(ざっくり)と囁かれており、前前作の個展「1%の仮想」の初回来場者数が数千人だったり前作「アスタリスクの花言葉」の告知ツイートの閲覧数クリア者数が同じくらいのオーダーだったことを考えると、そのくらいのコミュニティの規模感やリーチ性を考慮した宣伝が必要になってきます6。私が作者であることを考えるとさらに複雑で、個展も「アスタリスク」もVRChat内ではあまり見ないタイプのワールドであり、特に後者は内容を知っているか知っていないかで想定される次回作の内容(=「ヨツミがどこまでやらかしうるか」)がまるっきり変わってくるので、

  • 個展だけ行ったことある人(数千~数万人)
  • アスタリスクにも行ったけどクリアはしていない人(数千人?)
  • アスタリスクもクリアした人 (数千人)
  • アスタリスクのイトまで読んだ人 (数百人)
  • そもそも私のことを知らない人(数千人?)

の全員に対して事前知識なしでいい感じに内容が伝わる告知を行う必要がありました。

……で、上のようにしたのですが、たぶんいい感じによくわからない感じになっていると思います。私の意図を読んだ人ならもう9割がたギャグのような告知ですが、実際にワールドに行ってみるまではだいたいそういう理解で合っています。そうでない人にとっては「へー誰かと組んで夏っぽい(セカイ系っぽい?)worldを作るのか、写ってるミーシェちゃんはヨツミさんのフレンド?」みたいな感じに見えると思いますが、リリースするまではだいたいそういう理解で合っています。

PVを見た限りでは二人の女の子が出てくる感動系のなにかに見えると思いますが、アスタリスクの内容を知っている人にとっては「例のアレ」の進化系にも見えるかもしれませんし、よく見るとホラワの一端のような演出もちらほら見受けられると思います。つまりそういうことです。作者は年単位のアクロバティック伏線回収を平気でやるような人間なので、今回もそういう感じでよろしくお願いします7

キャッチコピーである「あの日の夏に同期する」は作品本体のモチーフ(夏)を尊重しつつVRChatっぽさを出すようにした結果決まったもので、「とりあえずなんかいい感じの夏の体験ということがわかるようにしよう」ということでこういうコピーにしています。ちなみに開発チーム内部で使っている非公式(?)キャッチコピーは「最高の夏」です。 最高の夏、つくりたいですよね。

ジャンル名の「VRインスタレーションプロトコル」については、ほかのジャンル名でどうしても形容がつかないので仕方なく命名したものです。実際、「1%の仮想」も「個展」とは称しているけど最後らへんはそれだけでは形容できない演出をしていますし、「アスタリスク」についても「謎解き」とは称しているけど最後らへんはそれだけでは形容できない演出をしているので8、今回はもう諦めて「内容を適切に説明するジャンル名」を新しく命名しました。なので「『VRインスタレーションプロトコル』って宣伝してたけどぜんぜんVRインスタレーションプロトコルじゃないじゃん!」という事態は発生しないと思います。

ルピ×ファス × ヨツミ

今回は3人によるグループ制作という形態をとっています。きっかけはルピさんとファスさんから「こういうシナリオのVR体験を作りたい」という相談を受けたことで、そこからこのプロジェクトが始動した感じです。といってもワールド制作のノウハウを持っているのは私のみなので、シナリオの細かいところは実装可能な範囲で私がアレンジしたりしています。その代わりといってはなんですが、二人には主にTwitterにあげる動画撮影などを手伝ってもらうことにしています。

ちなみに撮影場所はPublic化されていない私の作業用ワールドです(フェア精神)。

告知画像等にも出てもらう関係上、改変は「夏」や「夏休み」のイメージに合うようにしてもらっています。 基本的には服装をデフォルトのものから夏っぽくする(例えばフードをクルーネックっぽくするとか)ことに加えて夏っぽい帽子やその他アクセサリを着けてもらっています。

三人で左手人差し指につけている三種類の指輪は今回のチーム制作での「絆」のようなものをアバターで表現するためのものです。VRChatユーザがつけている指輪って「同じ指輪をつけている相手」を嫌でも意識させてしまうのでいいですよね。

ちなみに今後使用されるのか分からない決めポーズは単純に「指輪を強調するポーズ」として設定しました。

コンセプト「夏」

夏といえば神社です9。PSFはいくつかの区画に分かれた単一のワールドにする予定なのですが、Ennichi Playgroundで作ったモデルを使い回せるのでそのうちひとつは神社にする予定になっています。今はひとまず「夏」をまるまるひとつ作るに足るモデル群を仮組して配置を考えている段階なので単色なのですが、あとあとテクスチャやらなにやらもなんとかする予定です(ざっくり)10

ちなみに右上に写っているのはルピさんです。こういう「画像をよく見るとさりげなく重要な情報が含まれている」のっていいですよね。

夏といえば真夜中の住宅街です(?)。「1%の仮想」も「アスタリスク」も実はPost Processing Stackを有効にしていなかったので、それを活かせる場所として「夜にライトをたくさんピカピカできる場所」として小さな街を作ろうかと思っています。というのは建前で、実際は何年も前に作ろうと思って頓挫した3D TPSゲーム「魔法使いのカーディナル」(前題「セブンデイズ・プラスワン」)の舞台となる街のために作っていた3Dモデル群をリサイクルしたものになります11


こんな感じで、 何か月かごとに記事も書いていく予定です。今回はコンセプト的なトピックが多めですが、次回以降はがっつりワールド制作関係のことを書くと思います12。最新の情報は#PROJECT_SFをご覧ください。


  1. これいる?
  2. これを書いたのがヨツミさんであることを明示するためには必要です。
  3. 以降(以前も)の文章はルピさんおよびファスさんの書いたものではありません。念のため。
  4. まれに「アーティスト」と言われることがあるのですが、「最初にVRCで作った作品がたまたまVRメディアアート個展だった」「それ以降半分冗談でときどき『自称メディアアーティスト』を名乗っている」だけで私はアーティストでもなんでもありません。「1%の仮想」でアート作品と呼べるものを作ったのは高校の美術の授業の時以来です。
  5. 某所のあとがきに似たようなことを書きましたが、アスタリスクは「今後どんな『ワールド』を作っても絶対に超えることのできない作品」を目指して作ったものなので、ある意味成功ではあります。
  6. VRCは参加障壁が非常に高く(VR機器・アバター・「仮想世界で生活するという強いモチベーション」が必要)、私にはコミュニティ外から人を引っ張ってくるほどの知名度もモチベーションもないのでコミュニティ外への宣伝は意図していません
  7. 一応のレギュレーションとして、アバター等常時表示している場合を除き、関連情報には#PROJECT_SFタグをつけるなどしてそれが関連情報であることを明示します。
  8. 「内容を適切に説明するジャンル名」は実は存在していて最初の部屋にしれっと書いてあるのですが、ネタバレになるので特に強調はされていません。
  9. と個人的には思ってるんですけど、夏の昼間に神社に行く体験って実際あんまりないですよね?Japan Shrineの影響でしょうか?
  10. といいつつ、上のツイートの時点ですでに「『Albedo, metallic, roughness, emission』 情報をいい感じにパレットとUVからデコードする軽量シェーダー」みたいなものを作って使っているので、全モデル合わせて1マテリアルだったりします
  11. もとのゲームでは「3月下旬のほんのり暖かい風が吹いている真夜中の住宅街」を想定して作っていました。個人的には1年で一番好きな瞬間なのですが、全部作ってると時間が足りないので心を鬼にして夏を作ります。
  12. 実際のところ、このブログ記事を書いたのは1月中旬だったりするので、本当はもっと開発が進んでいたりします。